ポートレートを撮っているカメラマンや被写体モデルにとって「目線」って気を使っている方が多いと思います。
ただジャンルによってカメラ目線が良い場合と、目線外しの方が良い場合がありますよね。
ではどうやって使い分けすれば良いのでしょうか?
今回はポートレートではカメラ目線より目線外しが圧倒的に好まれている理由と視線を合わせるときの注意点、そして目線外しで重要な”瞳の割合”についてご紹介します。
ポートレートではカメラ目線より目線外しが圧倒的に好まれている理由
プロアマ含めて多くのポートレート写真では「目線を外している」写真をよく見かけることがあります。
目線外しが好まれている理由をググってみたんですが言語化された記事がなかったので、敢えてその理由を考えてみました。
自分のこれまでの体験からその理由として考えられるのは以下の3つかなと思います。
カメラ目線より緊張しない
これは被写体モデル歴が短いモデルさんに限った話なんですが、撮られ慣れていないモデルさんはついついカメラ目線をしがち。
カメラ目線をすると当然、カメラマンとレンズ越しに見つめ合っているわけですからモデルさんの緊張がもろに顔に出やすくなります。
普段から訓練しているモデルさんでもない限り初めましてのカメラマンとカメラ目線で抜群の笑顔ができる人なんてそういないですよね。
最近はプロモデルではない普通のOLさんや学生さんモデルがSNS上で活躍していますが、ほとんどが目線外しの写真が多いです。
撮る側の工夫という意味合いもあると思うんですが目線を外した方がモデルさんがリラックスできて表情も自然と柔らかくなるので写真全体の底上げに繋がります。
領域展開されたフィールドを切り取るため
ポートレート撮影歴の長いカメラマンさんやモデルさんはこれが一番しっくりくる目線外しの理由かなと思います。
あらかじめ頭の中で組み立ててある空想の世界観や作品イメージを優先するため、カメラ目線で邪魔されたくないと思いがあるのではないでしょうか。
まるでアニメのワンシーンのように作り上げた世界観の一部を切り取るから作風が生きるのであって、逆にその世界観の中でカメラ目線があると作品がとても陳腐なもののように感じることがあります。(あくまでも個人的見解です)
領域展開の意味が分からない方もいるかもしれませんが、要するにそこにいるモデルさんの雰囲気、ロケーションが作り出すフィールドのようなもの。
よく言われている”雰囲気あるモデルさん”というのはアニメ『呪術廻戦』で言う領域展開(又は簡易領域)が出来る人だと思います。
その壮大さをカメラ目線でレンズの中に収めようとすることに意義を感じないし、第三者的な角度から見ている方が壮大さやそこにある物語は伝わりやすいのではないでしょうか。
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目線外しの方がエモくなる
ポートレートに限らずスマホ自撮りでも目線外しをするインフルエンサーがたくさんいます。
その理由は前項で話した領域展開に似ているかもしれませんが、目線外しの方がエモくなりやすいためです。
目線外しはファッションや美容との相性がよく、ファッション雑誌でも目線を合わせた写真より目線を外した写真の方がよく目にしますね。
これは読者がモデルさんに意識がいかないよう服を目立たせるため「視線誘導」している部分もあると思いますが、単純にその服を着ることで生まれる雰囲気を重視しているからではないでしょうか。
ただし目線は外せばなんでも良いという話しではないので注意点は後ほどご紹介します。
カメラ目線が良いケースと目線外しが良いケース
ここでは具体的に「カメラ目線が良いケース」と「目線外しが良いケース」それぞれまとめてみました。
私がカメラマンをするときは「横顔」と「目」を撮るのが好きなんですが、これまでの実経験をもとにまとめています。
ジャンルによってある程度の傾向はありますが必ずしもそうじゃないとダメということではなくて、割合としてはこういう傾向がありますよ、という感じて見てもらえると良いと思います。
カメラ目線が良いケース
カメラ目線の方がしっくりくるケースは以下。
・記念写真
・プロフィール写真
・オーディション写真
・グラビア
・ポートレート(顔アップ)
・Twitter写真
例外もありますが記念写真やプロフィール写真は王道でカメラ目線が良いと思います。
いくらエモい写真が良いとは言え会社の面接を受けるとき履歴書の証明写真で目線外ししている人はいないでしょうからね。
グラビアはマガジンやヤンジャン表紙のような写真ですが、表紙の見出しには必ずカメラ目線の写真が使われています。
グラビアは写真のトータル雰囲気よりタレント(又はアイドル)の魅力を全開で伝えるために撮影されていると思うので、その人の印象を強くするため敢えてカメラ目線にしているのでしょう。
Twitter写真は、そもそもTwitter情報量は莫大でツイートやリツイはすぐ情報が流されやすい傾向があります。
その中で多くの人の目にとまりやすい目線写真は有効かなと思っていますね。
目線外しが良いケース
逆に目線外しが良いケースは以下のとおり。
・ランドスケープフォト
・コスプレ
・雰囲気重視のポートレート
・雰囲気重視のブライダル
・スナップ
・インスタ写真
・官能写真
何となく共通点が見えてくるかなと思うのですがトータル雰囲気を重視しているジャンルでは目線外しが多く使われている傾向があります。
ランドスケープフォトは自然景観がメインでコスプレもキャラ再現性を高めるため決め技やポージングを重視するため目線は外れていることが多い。(キャラによっては目線合わせもありますが)
Twitter写真は目線合わせが良いのに対してインスタ写真は目線外しの方が良いかなと思っています。
その理由は多くの人はインスタを開くとき”無意識”で開いていますが、そこから気になったフィード投稿からプロフィールに飛んだとき多くの人はわずか2~3秒で離脱するか判断しています。
その判断基準になるのがプロフ画面の下に表示されている過去投稿の写真カードです。(横3枚に並んだ3カラム画面)
この並んでいる過去写真全体の雰囲気が良ければたくさん見られる機会が増えるため、一枚だけバシっと決まったカメラ目線写真があってもあまり意味がありません。
全体のトータル雰囲気を重視した方がアクセスされやすい傾向があるので、インスタでフォロワーが増えない人は目線外しでトータルの雰囲気が良い写真を投稿をしてみると良いでしょう。
少し話しが逸れてしまいました。
目線を動かして合わせるときの注意点
ここではカメラマンとモデルがポートレート撮影をしている状況下でモデルさんの視線を動かして合わせるときの注意点をいくつかご紹介します。
モデルさんの体全体が映り込む「引きの写真」では分かりにくいですがバストアップ又は顔アップで写るときは露骨に出やすいので参考になると思います。
真上や真横を見ない
まず前提としてモデルさんに「目線外して!」と言われると真横や真上を見てしまうケースがありますね。
引きの写真なら目立ちませんが寄っている状況だと目の黒い部分が見えないくらい白目になっていることがあります。
人によって目の大きさや瞳の大きさは違いますがこれはモデルさんが目線を外すことでどう映っているか再現性がない経験値に原因があります。
慣れていないモデルさんにはありがちなんですが、レンズから目線をほんのちょっと外しただけでも目線は大きくズレていたりします。
また逆にレンズに近すぎても中途半端な目線位置になることもあるので、撮った写真を見ながらすり合わせていく必要があるでしょう。
カメラマンが目線誘導する
モデルさんが慣れている慣れていない関係なくカメラマンが思っている作風に仕上げるためには「的確な指示」が重要になります。
私もよく目線指示を出すことが多いのですが「後ろにあるあの赤い看板を見て下さい」と具体的に指示を出すことがあります。
「目線外して!」と指示されてもどこに外せばいいのかモデルさん側には伝わりにくいので、上手にカメラマン側が目線を誘導してあげると解決するでしょう。
また、同時にどの目線が美しいかカメラマン側の見極めや経験値も重要だと思います。
利き目を使う
ある程度、撮られ慣れているモデルさんは分かると思うのですが人間の顔は左右対称ではありません。
具体的にあげると、
・右目と左目の開きが違う
・左頬より右頬の方がシャープ
・髪を右にかけるより左にかけた方が良い
・笑顔をすると左より右の方が口角が上がる
など同じ顔のはずなのによく見ると左右に違いがあると、写真には大きな変化をもたらします。
あらかじめ利き目をカメラマンに伝えておいたり、顔の向きはどちらが美しいか把握しているだけで撮影効率は大きく上がると思いますね。
この辺りはモデルさんとカメラマンのコミュニケーションが必要になってくるので撮影前に打ち合わせしておくと良いでしょう。
私が目線外しでもっとも重要だと思っている「瞳の割合」
私がカメラマンとして女性ポートレートを撮るときは必ずといって良いほど顔アップで瞳を撮ったり、横顔を撮っていることが多いです。
モデルさんの顔がタレントに似てるとか、撮ってるとそのタレントを撮ってるような気分になることがありますが「瞳」はそれぞれ異なる個性があります。
横顔も同じで女性が美しく見えるのは”横顔”という私の思い込みなのかフェチなのか分かりませんが、横顔でも瞳は重要な要素。
「瞳」を撮っているとその人の瞳の色や、白と黒の割合があってそのモデルさんにとってベストな目線を知ることができます。
「Digital PR Platform」調べによると日本人は白目と黒目の比率が「1:1.5:1」が多いのに対して、多くの人は「1:2:1」の割合がもっとも美しく理想的な瞳として支持を集めています。
コンタクトレンズやカラコンでもこの黄金比率「1:2:1」は採用されていて、瞳を大きく見せるための工夫が施されています。
撮影しているとモデルさんがカラコンしているかどうかは気付くものですが、それも踏まえて白い部分が多い人は目線を外し過ぎると白目になりやすい。
反対に瞳が大きい人は大きく目線を外さないと外しているように見えないうえ、やり過ぎるとギョロっとした目になりがち。
これは目の中だけでなくまぶたの形やまつ毛、涙袋の形も影響しているのでホントの意味でその人にしかない個性だと思います。
瞳が大きいのと小さいのどっちが良いという話しではなくそれぞれの個性や特長を踏まえてちょうど良い目線外しを習得して貰えたら良いと思いますね。
作風を重視するなら目線外しでグラビアなら目線合わせ
今回はポートレートではカメラ目線より目線外しが圧倒的に好まれている理由と視線を合わせるときの注意点、そして目線外しで重要な”瞳の割合”についてご紹介しました。
撮りたいジャンルによって目線を合わせるかどうかは「作風」を大事にするのか「グラビア」を大事にするかが大きな分かれ道になると思います。
被写体モデルさんの魅力を全開で伝えるなら目線合わせ、作風としてトータル雰囲気を重視するなら目線外し。
目線を外す理由を言語化したWEB記事が見当たらなかったため駆け出しカメラマンやモデルさんの参考になれば幸いです。
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カメラを始めてわずか半年でプロモデル、テレビ局タレントの撮影を担当する。ポートレート撮影や企業撮影のほかWEB広告クリエイターとして活動。2021年7月7日に鹿児島写真部MUZEを立ち上げ、クリエイターやアパレル・ハンドメイド作家・地元店舗とコラボ企画を行う。2022年『PASHA STYLE』認定クリエイター。鹿児島出身。
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