前回は「顔料インク」の特徴についてご紹介しましたが、顔料と対にあるのが「染料インク」。
衣類や染め物としても使われているこの染料インクで写真プリントを経験したことがある方も多いのではないでしょうか。
安くで販売されている家庭用インクジェットプリンターはほとんどが染料インクですね。。
今回は写真を印刷することが多いカメラマン目線から染料インクとはどんな物なのか?またメリット・デメリット、顔料インクとの違いやおすすめ染料インクプリンターをご紹介します。
プリンターには顔料インクのみ、染料インクのみ、染料+顔料MIXの3パターンがあります!
この記事を読むことで以下のような悩みを解決することができます。
・染料インクってなに?
・顔料と染料って何が違うの?
・染料のおすすめプリンターって?
染料インクの特徴や実際に使っていて感じるメリット・デメリットを理解することができますので、最後まで読んで頂けたら幸いです。
プロカメラマンやハイアマチュアから愛されている顔料インクで印刷された写真。「【写真プリント予備知識①】顔料インクとは「絵の具」のように表面に定着する方式のこと!染料インクとの違いは階調の豊かさ。」では顔料インクの特徴、メリット・デメリットやおすすめ顔料プリンターをご紹介しています。
染料インクは紙の素材感を生かす特徴がありますが、プロ仕様のインクジェットプリンターは多くありません。「【2022年最新】写真印刷におすすめ染料インクジェットの神プリンター5選!写真プリンターに求められる3つの要素とは。」ではおすすめ染料インクジェットプリンターをご紹介しています。
染料インクとは「紙素材」の良さを生かす染み込み方式のこと
出典:unsplash
染料インクとは衣類や染物のように水に溶ける水溶性、かつ繊維質の内部まで浸透するインクのこと。
『染料インクは染料を溶剤に溶かしたインクで、顔料インクに比べて多くの色を作り出すことができる。』
出典:Wikipedia
インクには油性・水性があり、洋墨(ようぼく)という顔料・染料を含んだ液体・ジェル状であることが多く、文字を書いたり表面に色付けするために使われています。
最近では、ボールペンやプリンターなどで「水性顔料インク」と言う水濡れOK、長期保存できる、手についても水洗いで落とせると言った特徴があります!
主に、染料の着色剤として用いられているのは以下。
・【水溶性】染料…アニオン性アゾ、フタロシアニン
・【油性】染料…アゾ系金属錯塩、 フタロシアニン等
出典:UBE科学分析センター
ここに水溶性の場合は、水・乾燥防止剤・浸透剤・pH調整剤・界面活性剤などが含まれています。
油性染料の場合は水ではなくケトン・アルコールといった有機溶剤が含まれており、水溶性染料と共通しているのは着色剤という形になっています。
よく分かんないけど水性も油性もどちらも同じ着色剤が使われているのですね。はい。。
また、前記事で紹介した顔料インクが繊維の上に定着するのに対し、染料は繊維の中まで浸透するといった特徴があります。
出典:EPSON
染料インクの良いところは繊維質の中まで浸透することで顔料インクに比べ複雑なグラデーションを作り出すことができるため、写真に必要な細かい色表現が可能になります。
しかし、繊維質に浸透するがゆえ素材の痛みなど材質そのものの、影響をとても受けやすくなるため耐水性、耐光性は顔料インクに比べ劣るという傾向が。
仕事はとても繊細だけど外的要因に左右されるところは、まるで敏感気質のアーティストのようなものですね!
次章では、染料インクのメリット・デメリットについてご紹介します。
染料インクとは異なる性質を持つ顔料インクは写真展示用よしてプロアマ問わず使用されています。「【2022年最新】写真印刷におすすめ顔料インクジェットプリンター5選!写真展示やフォトコンには顔料インクが最適です。」ではおすすめの顔料インクジェットプリンターをご紹介しています!
染料インクのメリット・デメリット
出典:unsplash
染料インクはとても細やかな色のグラデーションを生み出す一方で、劣化しやすい特徴からとても扱いずらいと思う方も多いのではないでしょうか。
私は顔料・染料いずれのインクジェットプリンターを使っていますが、その中で染料インクプリントでは以下のようなメリット・デメリットを感じることがあります!
・メリット/①光沢紙との組み合わせが美しい
・メリット/②顔料インクよりランニングコストが安い
・デメリット/①印画紙の紙質に影響されやすい
・デメリット/②乾燥するのが遅い
染料インクの場合、個人的にはプリントする紙素材が限定されるイメージがありますが、その辺りも含めてメリット・デメリットをおさらいしていきます。
染料インクのメリット/①光沢紙との組み合わせが美しい
染料インクは繊維質の中に溶け込む特徴があるため、プリント紙のチョイスは重要なポイント。
その中でも特に発色が美しい「光沢紙」との組み合わせで特にその個性を生かすことができます。
出典:EPSON
上の写真を見比べると分かりやすいですが左が「染料インクでプリントした高光沢紙クリスピア」、右が「顔料インクでプリントした高光沢紙クリスピア」。
もともと、高光沢紙クリスピアはニュートラルな白色で光沢度がとても高く、鮮やかに発色するといった特徴がありますが、染料インクでプリントした左の写真の方がよりコントラストが強い発色になっています。
好みの問題もありますがハッキリとした発色・表現が好まれる風景写真では染料インクが最適!
実際にプリントする際はレタッチやプリンタープロファイル調整なども、仕上がりに大きな影響を与えています。
染料インクのメリット/②顔料インクよりランニングコストが安い
出典:unsplash
染料インクのメリットとして多くの人に認知されているのが、顔料インクと比べてインク代が安いということ。
・純正CANON PFI-G1 10色セット(PRO-G1用)…18,400円
・純正CANON PFI-G1MBK 1色マットブラック(PRO-G1用)…1,760円
・純正CANON BCI-66 8色セット(PRO-S1用)…14,400円
・純正CANON BCI-66BK 1色ブラック…1,643円
出典:Yahoo!ショッピング
これはCANONが2020年11月に発売した顔料プリンター「PRO-G1」、染料プリンター「PRO-S1」の純正インク価格を比較したもの。
顔料は10色で、染料は8色なんですね。。
使用インクの数の違いもありますが全色セットだと「4000円」もの価格差があります。
例えば、プリント回数の多い方が毎月全色セットを買ったとしたら、年間で48,000円もランニングコストが違うということになりますね。
顔料インク「PRO-G1」、染料インク「PRO-S1」はどちらも同時期に発売され、スペック的にも拮抗している機種になります!
全体的な傾向として染料インクプリンターより顔料インクプリンターの方が、希望小売価格が高いという特徴もあります。
染料インクのデメリット/①印画紙の紙質に影響されやすい
出典:東京カラー印刷通販
プリント紙・印画紙にはさまざまなタイプがあり、大きく分けると7種類。
コート・上質・マット・アートポストはいずれも写真印刷でよく使われていますが、それぞれ紙厚・色・形状と異なる性質を持っています。
染料インクが紙に染み込みやすい特性はちょうど、習字用の半紙にたっぷり墨汁を付けた筆をおいた瞬間!フワッと半紙に染み込んでいく様子と同じ。
あの、想像以上に線が太くなったり、細くなったりするの苦手。。
この状態に近いため紙厚が薄い紙ほどインクが思った以上に浸透してしまい、正しい被写体のフォルムを維持することが難しくなります。
独特の色味・手触りをもった”和紙”をプリントすることも多いですが、染み込んだ味を生かすなら別ですがそうでない場合は染料インクは不向き。
基本的には紙厚がある程度あって、かつ表面が滑らかに近い形状でないと本来の写真を転写することは難しいと言えるでしょう。
染料インクのデメリット/②乾燥するのが遅い
出典:unsplash
プロ写真家・ハイアマチュアカメラマンが染料インクを遠慮する理由の一つに、”乾燥時間が遅い”ことが挙げられます。
『染料インクは、プリントした直後とインクが乾燥した後では、色が変わって見えるという欠点があります。ふつうはそこまで気にするほどでもないですが、カメラマンやイラストレーターのように、テストプリントと色調整を繰り返して、自分が表現したい色を追求する人にとっては大問題です。』
出典:松本洋紙店「紙のブログ」
プリント直後の色安定時間表を見てみると染料は24時間以上、置いておくことをEPSONが推奨していますが、顔料はプリント直後からかなり高いレベルで安定していることが分かります。
出典:EPSON
この安定性の低さからプリント直後24時間以上待たないと予想していた色が出るか分からないわけです。
写真展に出す写真を何枚もプリントするなら1~2週間がかりですね。。
このデメリットがある限り、何度も作品を追い込むためのテスト&プリントを必要とする場面では不向きであることが分かります。
顔料インクとの違いは「再現性」を取るか「クリエイティブ」を取るか
出典:unsplash
ここまで、染料インクのメリット・デメリットをご紹介してきましたが、染料インクと顔料インクの根本的な違いは以下。
染料インクは「より忠実に再現性を高める描写」、顔料インクは「よりクリエイティブを高める描写」。
写真を作品と捉えるかどうかですがよりこだわった作品を追い込んでいくためには、スピーディーかつ繊細な顔料インクがベター。
反対に写真の仕上がりに関してスピードを求めていない、かつ忠実に見えたものをプリントするなら染料がベスト。
「【写真プリント予備知識①】顔料インクとは「絵の具」のように表面に定着する方式のこと!染料インクとの違いは階調の豊かさ。」でも紹介しましたが、染料インク・顔料インクそれぞれの違いを比較した表が以下。
顔料インク | 染料インク | |
方式 | 紙の表面に定着 | 紙に染み込む |
発色 | 高精細な色再現 | クリアーで鮮やか |
光沢 | ムラが出やすい | 光沢感を得やすい |
印刷表面 | ザラザラ | 滑らか |
乾燥時間 | 早い | 遅い |
相性の良い用紙 | 多い | 少ない |
多機能 | 少ない | 多い(コピー・スキャナー) |
経年劣化 | しにくい | しやすい |
擦れ・剥がれ | しやすい | しにくい |
価格 | 高い | 安い |
プリントする用途に合わせて染料インク・顔料インクを使い分ける方法もありますし、チョイスした印画紙との組み合わせによって結果は異なります。
染料インク・顔料インクをプリントするにはインクジェットプリンターが一般的ですが、次章ではおすすめの染料インクジェットプリンターをご紹介します!
おすすめの染料インクジェットプリンター
出典:unsplash
染料インクのメリット・デメリットを踏まえた上で、染料インクを使う予定があるという方向けにおすすめインクジェットプリンター3選をご紹介します!
EPSON「カラリオ V-edition EP-50V」
出典:Amazon
【メーカー】EPSON
【価格(Amazon)】48,800円
【インク】染料6色
【印刷方式】MACH方式
【最大用紙】A3ノビ
【インクコスト(L版カラー)】約14.5円
【印刷スピード(A3ノビ光沢紙)】約2分23秒
【質量】約8.5kg
コンパクトなモデルながらA3ノビまで印刷可能なEPSONの染料インクジェットプリンター「EP-50V」。
「EPSON clearchromeK2インク」と称される6色インクによってスナップから風景写真まで鮮明に描写することが可能になっています。
立ち位置としては価格・性能ともに家庭用プリンターとプロ仕様プリンターのちょうど中間といった辺りでしょうか!
コスパにも優れたタイプでL判1枚が約14.5円と手軽にプリントすることができるので、初めての染料インクジェットプリンターとしておすすめです。
【※Amazonなら最安値帯で販売中!】
⇒Amazonサイト
EPSON「カラーインクジェット複合機 EWM973A3T1」
出典:Amazon
【メーカー】EPSON
【価格(Amazon)】91,517円
【インク】染料6色
【印刷方式】MACH方式
【最大用紙】A3ノビ
【インクコスト(L版カラー)】約8.1円
【印刷スピード(A3ノビ光沢紙)】約1分39秒
【質量】約11.1kg
2021年に発売された最新のエコタンク(インクボトル詰め替え式)採用の染料インクジェットプリンターでL判1枚が約8.1円とコスパが圧倒的に優れている「EWM973A3T1」。
こちらも6色タイプでモノクロからカラーまで幅広く、細やかな色調・階調を表現することが可能で、給紙方法や両面プリント・コピー・スキャンと多様な使い方ができます。
写真の細かい表現はそこまでこだわらないけど、それなりに綺麗に印刷できてCDレーベル印刷・スキャンなどマルチに使えるモデルですね。エコタイプなので業務用プリンターとしても優秀だと思います!
Wi-Fi搭載でスマホ・タブレットから専用アプリを通じてプリント可能で、ICCプロファイル(写真データとプリントの較正)の調整もできるのでマルチに活躍してくれそうですね!
【※Amazonなら最安値帯で販売中!】
⇒Amazonサイト
CANON「imagePROGRAF PRO-S1」
出典:Amazon
【メーカー】CANON
【価格(Amazon)】69,800円
【インク】染料8色
【印刷方式】MACH方式
【最大用紙】A3ノビ
【インクコスト(L版カラー)】約24.5円
【印刷スピード(A3ノビ光沢紙)】約2分50秒
【質量】約14.1kg
フォトグラファー向けに開発され2020年11月に発売されたモデルで、2015年に発売されたプロ向けPRO-100Sの後継機として誕生した「PRO-S1」。
現在も20万円前後で販売されているプロモデル「PRO-1000」と同等の画質で、かつ大幅に小型軽量化(PRO-1000は約123kg)されたモデルでコスパにも優れたモデルです。
10色顔料プリンター「PRO-G1」と同日に発売されたモデルですが、S1・G1どちらも高スペックで従来モデルより小型軽量化・低価格で発売されました。どちらを選ぶかは好みもありますが、より発色の良さを求めるならS-1がおすすめです!
A3ノビのプラチナグレード紙にフチありで印刷する場合「PRO-S1」は1分30秒とG1よりプリントが速く、「Media Configration Tool」機能によってキャノン純正品だけでなく他社用紙も追加登録ができます。
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染料インクプリンターでプリントをもっと手軽に!
出典:unsplash
今回は写真を印刷することが多いフォトグラファー・カメラマン目線から染料インクとはどんな物なのか?また使って感じたメリット・デメリット、顔料インクとの違いやおすすめ染料インクジェットプリンター3選をご紹介しました。
顔料インクと比較して細かい諧調やグラデーションは苦手としつつも、鮮やかで目の覚めるようなクリアな発色やコスパの高さには一定の魅力があります。
これまでは顔料インクジェットプリンターがプロカメラマンやアマチュアカメラマンから支持されてきましたが、「PRO-S1」や「EP-50V」のように手頃に美しい作品つくりができる染料プリンターの登場によって今後の市場も変わってくる可能性がありますね。
今回の記事が、染料インクって何?顔料インクとの違い、おすすめ染料インクジェットプリンターを知りたいと思っている方の参考になれば幸いです。
鹿児島写真部MUZEでは「ポートレート撮影体験」「フォトウォーク」「写真展」等のイベント開催を行っており、楽しい撮影を楽しもう!を合言葉に撮影技術の向上・モデルマッチング・地元観光応援を目指した企画を行っています。
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カメラを始めてわずか半年でプロモデル、テレビ局タレントの撮影を担当する。ポートレート撮影や企業撮影のほかWEB広告クリエイターとして活動。2021年7月7日に鹿児島写真部MUZEを立ち上げ、クリエイターやアパレル・ハンドメイド作家・地元店舗とコラボ企画を行う。2022年『PASHA STYLE』認定クリエイター。鹿児島出身。
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