10月になり全国の小中学校で一斉に運動会シーズンに入りますが、コロナ渦あとの運動会は様変わりしてお弁当なし、昼終わりという形式にもまだ戸惑っている方も多いと思います。
お弁当や場所取りの手間が減った分、お父さんお母さんの関心は上手に我が子の写真を撮影することではないでしょうか。
私自身、5年以上運動会の撮影をしており今年の運動会ではビデオカメラに比べて一眼レフカメラを持った親御さんが多いなと肌で感じましたが、上手に撮れなかったり思うように扱えないという方も見受けました。
今回は現役カメラマン目線で失敗しない運動会を上手く撮影するコツをご紹介します。
他の記事を見るとたまに誤った内容も見受けられるので、実際に毎年撮影しているカメラマン目線からリアルな情報を提供できればと思っています。
運動会前にできる準備は撮影機材のみ
より良い写真を撮るために運動会前にできることと言えば、機材の準備くらいのものです。
お持ちのレンズの距離感は事前にモニターを見て練習することができますが、子供たちの立ち位置や並び順は当日にならないと分からないため予め練習ができません。
ミラーレスフルサイズセンサーのカメラがもっとも望ましいですが現在どんなカメラを持っているか、また運動会に合わせてカメラを新調できるかなど予算ベースの話しになるとキリがないので、もっとも重要だと思うポイントだけ紹介します。
レンズは望遠よりズームレンズが一番良い
これは多くのWEB記事で見かける内容ですがどの記事を読んでも望遠レンズを準備しよう!的な意見をよく目にします。
ですが、私の経験上もっとも必要だと感じるのは「ズームレンズ」を準備すること。
その理由としては以下。
・ズームレンズなら遠くから望遠でも撮れるし近接撮影もできる
・望遠レンズは操作が難しい
・運動会では撮影ポイントが限定されるので必要に合わせてズームできる
飛行機でも撮るのかな?というような超望遠レンズを持参する方もいましたが、ハッキリ言ってかなり操作に慣れた人でないと確実にファインダーに収めることはできません。
レンズの焦点距離というのは長ければ長いほど遠くの被写体をどアップで撮ることができますが、同時に圧縮効果も強くなるため手ブレが起きやすくなり三脚がないとまともに撮ることは難しいでしょう。
ちょうど射撃スナイパーが遠くから正確に的を狙うのと同じ原理なので熟練者でないと難しいことが想像できると思います。
おすすめは「24mm-105mm」「70mm-200mm」「24mm-240mm」この辺りのレンズが特におすすめ。
また運動会では意外と子供が近くを通過してシャッターチャンスが向こうからやってくるシーンもあるので、広角まで撮れるズームレンズは重宝します。
お持ちでない方は高い望遠レンズを買うより安いズームレンズをおすすめしますね。(オートフォーカス機能は必須)
フル充電と予備バッテリーを忘れずに
ここは基本的なところですが、とても重要な要素。
デジタルカメラは起動してシャッターを切ること以外にも自動フォーカスを合わせたり、アルバムを見ることでもバッテリーを消費していきます。
最近の一眼レフカメラなら標準で2~3時間は使えることも多いですが兄妹がいる方やお子さんの出番の数によってもシャッター回数は増えていきます。
前日にフル充電したらカメラボディに装着するのは撮影の直前。(バッテリーを本体に入れっぱなしにしていると放電するため)
併せて予備のバッテリーを最低1個は持っていないと不安ですね。
かけっこなどピント合わせが難しいシーンでは連写機能を使うことになるため、必要以上に見積もっておく必要があります。
ビデオカメラと一眼レフどっちがいいか迷っていませんか?
お父さんとお母さんで「静止画」「動画」を役割分担する方もいますが、そうでない場合はどちらを選択するか迷うところ。
私も初期はビデオカメラをズームして動画メインで撮影していましたが、あとで動画を見る頻度が低いため静止画メインに切り替えて撮影しています。
ビデオカメラは動画のみだが手振れ補正に強い
これはもっともビデオカメラの優れたメリットだと思いますが、ハンディタイプのビデオカメラは内部にジンバルのような強力な手ブレ補正機能が付いています。
動画撮影スタートしながらレンズ先端を揺らしてみると分かりますが、縦横の揺れをかなり吸収していることが分かります。
かけっこやリレーなど目まぐるしく子供たちが動き回るシーンでも三脚なしで腕を固定して撮影することで見やすい動画を撮ることができますね。
一方でデメリットは静止画が撮れない(撮れてもプリントできるほど精細な画像じゃない)ことと、単純にデータ容量が大きくなるので長期保管が難しくなり、見る回数も少なくなっていくでしょう。
一眼レフカメラは手振れ補正に弱いがデータ管理しやすい
最近の一眼レフカメラでもフルHDはもちろん4K8K動画を撮ることができるようになりました。
動画に関して最大のデメリットはビデオカメラと比べると手ブレ補正が弱いという点でしょう。
クリエイター達が一眼レフカメラでキレイな動画を撮っているのは、ジンバルなど安定して固定撮影できる機材を揃えているからです。
メリットは静止画が高画質・高精細で失敗してもいくらでもシャッターを切れるという点。
そして大量のJPEGやRAWデータ保管が可能で家族や知人に送ったり、お気に入りはプリントして飾っておくこともできるので動画よりのちに見る回数は多くなります。
親御さんの心情としてはとにかくたくさん撮っておきたい!ものですが、後でどのように保管するのか?見ることがあるのか?ということまで見つめ直すとムダな時間を減らして運動会を楽しむことができるのではないでしょうか。
失敗しない運動会を上手く撮影するコツ!
ここからは当日を迎えた運動会、どんなことを考えれば上手く撮影できるのかコツを5つご紹介します。
表現は人それぞれなので写真にゴールはありませんが、その場の雰囲気やいつも見ることができない子供たちの表情を切り取ることを前提とした私個人の見解になります。
プログラム順とスタート・ゴール位置を把握する
これは上手に撮影する上でもっとも大事なポイント。
事前に配られたプログラム表を見て出番が来るプログラムをお子さんと一緒にマーキングしましょう。
そして、校庭の配置図を見ながらクラスごとのテント位置、かけっこのスタート・ゴール地点、リレーの場所を把握していきます。
次に出番を迎える子供たちは待機所に行きますがテント近くの待機所に向かう可能性が高いので、この時点から付いて行くと全児童ダンスやレクリエーションなど大人数のプログラムでも目で追いかけることができます。
遠くから撮影する場合、同じ体操服にマスク姿だとなおさら自分の子供を見分けるのは困難なため、靴の色や靴下の色を蛍光色にしておくことでも見分けやすさに繋げることができますね。
この辺りは普段から我が子を観察しているかどうかも関わってくるので間違えて撮影した!なんてことがないようにしたいですね。
ちなみに中高学年はスタート地点がゴールになる事が多いですが、低学年はコーナー付近からスタートして約半周でゴールになるので注意が必要。
かけっこの撮影は前半に賭ける
これは私の持論かもしれませんが子供たちのかけっこは緊張感が走るスタートから中盤にかけて生き生きとした表情や動きを見せてくれることが多いです。
後半を過ぎると自分でも順位が分かってしまい惰性でダラダラと走ってしまう傾向があるため、撮影するポイントは下図のようにスタート地点の対面、もしくは中盤あたりのカーブ地点でスタンバイしておくのがおすすめ。
足の速いお子さんならゴール地点の対面で待つのもありですが、基本的に横一直線でスタートする光景とは違ってインコース沿いに縦並びでゴールに入ってくるので1位以外は重なって上手く撮れない場合があります。
反対にスタート直後は横並びで撮影しやすくまた最初のコーナーに向けて懸命な表情を見ることができるので醍醐味はスタート直後をおすすめしたいですね。
出番のプログラム2つ前から場所取り
運動会には暗黙のルールがありますがほとんどの場合、競技が始まるより少し前にスタンバイして撮影を終えるとすぐその場所を離れます。
校庭の外周沿いにロープやライン引きしてある学校が多く、最前列でシャッターチャンスを狙うにはそれなりに早くスタンバイしておく必要があります。
幸いコロナ渦の影響で一家族につき両親2人しか入場できないケースが多く、ライバルは少ないのかなと思いますが少なくとも目当ての競技が始まる2つ前には準備しておきましょう。
また、最前列にいる人の背が低かったりしゃがんでくれている場合もあるのでその上からカメラを構えることも可能ですね。
いずれにしても我が子の最高の一枚を撮るには「場所取り」は大事なポイントとなります。
F値は開放にしない
F値を開放(2.0や4.0など数字を小さくする)にすると背景をボカすことができます。
カメラに慣れた方ならお持ちのカメラレンズでどのくらい背景ボケが出るか判断することができますが、そうでない場合はあまりF値を小さくすることはおすすめしません。
その理由は、運動会はポートレートと違って背景にある学校やテント、たくさんの観衆の姿があった方が臨場感が出るから。
また、開放にするとカメラのイメージセンサーが外からたくさんの光を取り込んでしまうため、白飛びしやすいことも理由の一つですね。
おすすめはレンズの焦点距離にもよりますが「レンズ50mm以下ならF4.0~6.0」「50mm以上100mm以下ならF6.0~8.0」「100mm以上ならF6.0~10.0」のあたり。
あまりF値を上げすぎると光量が少なくなって暗い写真になりやすいのでF4.0~F10.0の間で最適な明るさとボケ感を選択すると良いでしょう。
躍動感を撮った方が感情移入しやすい
運動会に限った話しではありませんがイベントや行事では我が子の思わぬ表情や仕草を見ることができます。
立ち止まっている時の笑顔を鮮明に撮ることも大事ですが、友達と談笑してる姿や出番前のドキドキしている表情など普段は見れないようなとても貴重なシーンに出会うことがあります。
かけっこも同様でスタートした直後に必死に歯を食いしばって走っている姿は、力強さや成長した姿を感じることができますね。
走っているシーンでは両手を思い切り振っている瞬間、ダンスでは踊っている瞬間、応援している瞬間などその時の熱を感じることができる写真は目を引きます。
後で見返したときもひと際、印象に残るので家族アルバムに載せたくなる写真になるでしょう。
実体験をもとにしたおすすめのカメラ設定
カメラ設定は普段あまりいじる機会は少ないですが、運動会に合った設定は基本的にスポーツ撮影と似ています。
常に動き回っている被写体(子供)を追いかけるわけですから、カメラ性能もそうですが設定である程度カバーすることが可能。
実体験をもとに書いているので参考になると思います、1つずつ見ていきましょう。
シャッタースピードは1/400以上が推奨
カメラのシャッターを切る時間を決める「シャッタースピード」は動くものを捉えるのにとても重要な要素。
シャッタースピードは上げれば上げるほどシャッターが閉じる時間が短くなるため動きが早いものをブレずに撮ることができる反面、取り込む光量が少なくなるため暗い写真になりがち。
マニュアル撮影の場合のおすすめは「1/400~1/5000」あたりでAF(オートフォーカス)機能が付いたカメラレンズならそこまで大きく失敗するケースは少なくなるでしょう。
当然、光量も少なくなりますが前章で話したようにF値は開放厳禁なのでISO感度を「400~1600」あたりを基準に上げると良いでしょう。
運動会の場合は晴れていることが前提になるため空が極端に暗いケースはないと思いますが、太陽が雲に隠れたりテントの中から撮影するときは暗くなるのでいつもよりシャッタースピードを下げて、ISO感度を上げると良いですね。
マニュアル撮影が難しいという場合はカメラ機能のスポーツ撮影モードを使うと良いでしょう。
シャッタースピードやISO感度があまり分からない方はこちらの記事で詳しく紹介しています。
連写設定にしておく
シャッタースピードとは別に連写設定というものが最近のデジカメなら実装されていると思います。
カメラによって連写速度や枚数は異なりますが、シャッターを長押ししている間10枚以上連続して写真を撮ることができますよね。
この機能はスピード感があって1枚で良い写真を撮ることが難しい「かけっこ」「リレー」の時に威力を発揮してくれます。
この時、次に説明するコンティニュアスAFと組み合わせると良い結果を得られやすくなるでしょう。
コンティニュアスAFで追いかける
お持ちのメーカーや機種によってバラつきはありますがカメラ機能のAF(オートフォーカス)モードにはいくつか種類があります。
大きく分けて以下の3種類。
【シンプルAF】…ピントが合うとその位置で固定して撮影、止まっている被写体に最適なモード。
【コンティニュアスAF】…一度ピントが合うと動いていてもピントを合わせ続ける、スポーツや鉄道撮影に最適なモード。
【自動切り替え】…ピントの合わせ方をシングルAFかコンティニュアスAFのどちらかをカメラにお任せするモード。
自動切り替えは絶えず動いている子供たちの撮影には難易度が高く、シンプルAFでは動いているものを捉えることが難しくなります。
一度ピントが合えばずっと合わせ続けてくれるコンティニュアスAFがもっとも最適。
ただし、かけっこやリレーではファインダー越しに見ていると前後が入れ替わったり左右に膨らんだりするため、ピントを合わせる場所を間違えると修正できなくなります。
その年の運動会は一度きりで競争競技は一瞬なので練習しておくことをおすすめしますね。
上記以外にも瞳AFなど最新モードを備えたカメラもありますが、運動会の場合は正確に合わせることが難しいためおすすめしません。
お友達とのツーショットも忘れずに!
今回はネット上にあるどの記事を見ても定石とも思える内容が多かったので、私の実体験をもとにした運動会の撮影のコツをご紹介してきました。
お持ちのカメラレンズや熟練度によっても撮り方は違ってきますが、
・ズームレンズが良い
・動画より静止画の方が後で見る機会が多い
・かけっこはゴールより前半に賭ける
・躍動感を撮った方が感情移入しやすい
・コンティニュアスAFで追いかける
このあたりは熟練度に関係なく共通して言えるポイントかなと思います。
大切な我が子の一度しかないその年の運動会を失敗しないためにも、事前にカメラ設置を見直して試し撮りをして本番に挑みたいものですね!
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カメラを始めてわずか半年でプロモデル、テレビ局タレントの撮影を担当する。ポートレート撮影や企業撮影のほかWEB広告クリエイターとして活動。2021年7月7日に鹿児島写真部MUZEを立ち上げ、クリエイターやアパレル・ハンドメイド作家・地元店舗とコラボ企画を行う。2022年『PASHA STYLE』認定クリエイター。鹿児島出身。
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